自社でネットショップを持つべきか|モール出店との違いと、始める順番

アイキャッチ — 人通りの多い商店街の一区画(モール出店)と、自分の敷地に建てた店舗(自社EC)を並べ、集客と手数料の違いを対比した図

「ネット販売を始めたい」というご相談で、最初に分かれるのがここです。楽天やAmazonに出すのか、自社でネットショップを作るのか。

どちらが正しいという話ではなく、目的が違えば答えも変わります。 そして多くの場合、最初から両方をやろうとすると、どちらも中途半端になります。

この記事では、4つの観点で違いを整理し、どちらから始めるべきかの判断材料をまとめます。

この記事の結論

売上を早く立てたいならモール、利益率と顧客との関係を作りたいなら自社ECです。この2つは同じ「ネット販売」でも、モールは「人通りのある場所に出店する」、自社ECは「自分の土地に店を建てる」という別の行為です。実店舗があり、常連のお客様がいる会社なら、自社ECのほうが向いていることが多いです。理由は、集客をゼロから作る必要がないからです。


目次

4つの観点で比べる

モール出店自社EC
手数料売上の8〜15%程度+月額決済手数料3〜4%+システム月額
集客モールの来訪者に見てもらえる自分で集める必要がある
顧客データモールが持つ。直接連絡しにくい自社が持つ。メール・LINEで再訪を促せる
運用の手間出店ルール・イベント対応が多い自由だが、全部自分で決める

手数料の差は、年間で見ると大きい

年商500万円で考えると、モールの手数料10%なら年50万円、自社ECの決済手数料3.5%なら年17.5万円です。差額は年33万円。 システムの月額を足しても、自社ECのほうが残ります。

ただしこれは、同じ売上が立つ場合の話です。モールの10%は「人通り」への対価なので、自社ECで同じ売上を作るには、その集客を自分でやることになります。

比べるのは手数料ではなく「集客のコスト」

自社ECの月額が安いことは、それ自体では強みになりません。浮いた手数料を集客に回せるかどうかが本当の分かれ目です。広告を出す、SNSで発信する、既存のお客様に案内する——このどれかの手段を持っている会社が、自社ECで利益を残せます。

顧客データを持てるかどうかが長期の差になる

モールでは、購入者の連絡先は基本的にモール側が管理します。リピートを促したくても、直接連絡する手段が限られます。

自社ECなら、購入者のメールアドレスが自社に残ります。新商品の案内、季節の便り、再購入の提案が自分のタイミングでできる。 商品の性質上リピートが見込める業種(食品・消耗品・化粧品など)では、この差が年単位で効いてきます。


実店舗がある場合は、自社ECが向きやすい

すでに実店舗があり、常連のお客様がいる会社は、自社ECのほうが立ち上がりが速いことが多いです。

図解 — 実店舗の常連客・SNSのフォロワー・ホームページの訪問者という既存の接点から、自社ECへ人が流れる導線を示した図
図解 — 実店舗の常連客・SNSのフォロワー・ホームページの訪問者という既存の接点から、自社ECへ人が流れる導線を示した図

理由は集客です。ゼロから知ってもらう必要がなく、すでに関係のある人に「ネットでも買えます」と伝えるところから始められるからです。

  • 店頭でネットショップのQRコードを案内できる
  • 既存のホームページからリンクを張れる
  • SNSのフォロワーへ直接告知できる
  • 常連のお客様へ、来店時に口頭で伝えられる

逆に、実店舗も既存の接点も無い状態で自社ECだけを作ると、誰も来ないショップが出来上がります。 その場合はモールから始めて、売上と顧客が付いてから自社ECを並行する順番のほうが現実的です。

店舗のホームページ自体をまだ持っていない場合は、店舗のホームページは何を載せるか も参考にしてください。


自社ECの作り方は3つ

方法月額の目安向いている場合
無料・低額のECサービス0〜数千円商品数が少なく、まず試したい
Shopify などのECプラットフォーム数千〜1万円台本格的に運用する。拡張や外部連携が要る
既存サイトにカート機能を追加制作費+αすでにWordPressサイトがあり、商品数が少ない

商品数が20点以下で、まず売れるか試したい段階なら、無料・低額のサービスで十分です。 作り込むのは、売れることが分かってからで間に合います。

注意

最初から作り込みすぎる失敗が多い領域です。会員機能・ポイント・定期購入・在庫連携——どれも後から足せます。最初に必要なのは「買える状態」だけで、それ以外は売れ始めてから必要になった順に足すほうが、総額は安く済みます。

Shopifyは、実店舗のPOS(レジ)システムや基幹システムとつなぐ拡張が作れるのが強みです。当社でも、Shopifyと店舗レジの会員情報を連携させる開発を実際に手がけています。ただし、連携は「必要になってから」で構いません。


始める前に決めておく5つのこと

技術の話より先に、ここを決めてください。ここが曖昧なまま作ると、作り直しになります。

STEP
① 何を、いくつ売るか

商品点数とバリエーション(色・サイズ)の数。ここでシステムの選択が変わります。

STEP
② 誰が発送するか

注文が入ってから何日で出すか、誰が梱包するか。1日10件来たときに回るかを先に考えてください。ここが回らないと、売れた瞬間に業務が止まります。

STEP
③ 送料をどうするか

全国一律か、地域別か、いくら以上で無料か。あとから変えると既存のお客様に説明が要ります。

STEP
④ 返品・交換の条件

食品や衛生用品は返品不可にできますが、その旨をサイトに明記する必要があります(特定商取引法)。

STEP
⑤ 誰が問い合わせに答えるか

「在庫はありますか」「いつ届きますか」への返信担当。ここが決まっていないと、返信が遅れて評価が落ちます。

①〜⑤のうち、システムで解決できるのは①だけです。残りは運用の話で、ここを決めずに作ると必ず詰まります。

法律で必要な表示

ネット販売には、表示が義務づけられている項目があります。

  • 特定商取引法に基づく表記(事業者名・住所・電話番号・販売価格・送料・支払方法・引渡時期・返品条件)
  • 個人情報の取扱いについて(プライバシーポリシー)
  • 食品を扱うなら食品表示、化粧品・健康食品なら広告表現の制限

特定商取引法の表記では、住所と電話番号の記載が必要です。 自宅で運営する場合はここが悩みどころになるので、始める前に確認しておいてください。


よくある質問

モールと自社EC、両方やってもよいですか

可能ですが、同時に始めることはお勧めしません。在庫・価格・問い合わせの管理が2倍になり、どちらも中途半端になりがちです。どちらかで軌道に乗せてから、もう一方を足す順番が安全です。

既存のホームページにカートを付けるのと、別にECサイトを作るのはどちらがよいですか

商品数が10〜20点程度なら、既存サイトにカートを付けるほうが管理が1か所で済みます。それ以上、あるいは在庫・配送のバリエーションが多いなら、ECに特化したサービスを使うほうが後々楽です。

ネットショップを作れば売れますか

作っただけでは売れません。ネットショップは「買える場所」であって「知ってもらう手段」ではないからです。既存のお客様・SNS・検索のどれかで人を連れてくる手段とセットで考えてください。

最初にいくらかかりますか

低額サービスで始めるなら、初期費用はほぼかかりません。かかるのは商品写真の準備と、商品説明の文章づくりです。実はここが一番時間を使います。 10点の商品を載せるだけでも、写真と説明文で数日かかると見ておいてください。


まとめ

自社ECとモール出店は、目的が違います。

  • モール — 人通りのある場所に出店する。集客は付いてくるが、手数料と顧客データを渡す
  • 自社EC — 自分の土地に店を建てる。手数料は安いが、集客は自分でやる
  • 実店舗・SNS・既存のホームページなどすでに接点がある会社は自社ECが向く
  • 作り込みは後から。最初に必要なのは「買える状態」だけ
  • 商品数・発送体制・送料・返品条件・問い合わせ担当の5つを、作る前に決める

どちらから始めるべきか迷っている場合は、いまの顧客との接点を整理するところからご相談いただけます。お問い合わせからどうぞ。

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