「Next.jsで作ったサイトは速いって聞いた」「うちのサイトもNext.jsにした方がいいの?」
こうしたご質問を、技術に関心の高いお客様からいただくことがあります。
結論から言うと、Next.jsには確かに大きなメリットがあります。ただし、すべての企業に向いているわけではありません。
この記事は、WordPressとNext.jsの両方でコーポレートサイトを制作しているエンジニアが、Next.jsのメリットと注意点を、専門用語をできるだけ使わずに解説します。「うちの会社にはどちらが合っているか」を判断する材料にしてください。
そもそもNext.jsとは?
Next.jsを一言でいうと「プログラミングで作る高速サイト」
Next.js(ネクストジェイエス)は、React(リアクト)というプログラミング技術をベースにした、Webサイト・Webアプリケーションを作るためのフレームワークです。2016年にVercel(ヴァーセル)社が開発しました。
技術的な詳細は省きますが、ポイントは以下の3つです。
- あらかじめ完成したページを配信する(だから速い)
- すべてをプログラミングで自由に構築できる(だから自由度が高い)
- サーバーへの攻撃面が少ない(だからセキュリティが高い)
Netflix、Nike、Ferrari、はてな、メルカリなど、世界的な企業のWebサイトにも採用されている技術です。
WordPressとの根本的な違い
| 項目 | WordPress | Next.js |
|---|---|---|
| 一言でいうと | 管理画面で更新できるサイト作成ツール | プログラミングで作る高速サイト |
| 歴史 | 2003年〜(23年以上) | 2016年〜(10年) |
| 世界シェア | 約43%(CMS市場1位) | 急速に成長中(シェア統計は不確定) |
| 更新方法 | 管理画面にログインして操作 | CMS連携または直接コード修正 |
| 必要なスキル | パソコンの基本操作 | React/JavaScriptの知識 |
わかりやすくたとえると、WordPressは「完成品の家を購入してリフォームする」イメージ。Next.jsは「設計図から一棟ずつ建てる注文住宅」です。自由度は注文住宅が上ですが、コストと期間もかかります。
Next.jsでコーポレートサイトを作る5つのメリット
メリット1. 表示速度が圧倒的に速い
Next.jsの最大の特徴は表示速度です。
Next.jsは「静的サイト生成(SSG)」という仕組みを使い、あらかじめ完成したHTMLファイルを配信します。ユーザーがアクセスするたびにサーバーでページを組み立てるWordPressとは異なり、完成済みのページをそのまま返すため、表示が非常に高速です。
実際の数値で比較すると:
| 指標 | WordPress(Swell最適化済) | Next.js |
|---|---|---|
| PageSpeed(モバイル) | 70〜90点 | 90〜100点 |
| 初回表示速度(FCP) | 1.5〜3秒 | 0.5〜1.5秒 |
| ページ容量 | 1〜3MB | 150〜500KB |

Googleの調査によると、モバイルページの読み込みに3秒以上かかると、53%のユーザーが離脱するというデータがあります。表示速度が売上に直結するビジネス(ECサイト、予約サイトなど)では、この差は大きな意味を持ちます。
メリット2. SEO(検索対策)で有利になりやすい
Googleは2021年から、Core Web Vitals(コアウェブバイタル)というサイトのパフォーマンス指標を検索ランキングの評価基準に組み込んでいます。
Core Web Vitalsの3つの指標(LCP、FID、CLS)のうち、Next.jsは構造的に高スコアを出しやすい設計になっています。つまり、同じコンテンツであれば、Next.jsで作ったサイトの方がGoogleの検索順位で有利になる可能性があるということです。
ただし、注意点があります。SEOの成果を決める最大の要因はコンテンツの質であり、技術は補助的な要素です。良いコンテンツをWordPressで発信した方が、中身の薄いNext.jsサイトより確実に上位表示されます。
メリット3. セキュリティリスクが低い
WordPressは世界で最も使われているCMSであるがゆえに、ハッカーの攻撃対象になりやすいという側面があります。特に、WordPress本体やプラグインのアップデートを怠ると、脆弱性を突かれてサイトが改ざんされるリスクがあります。
Next.jsは静的ファイルを配信する仕組みのため、サーバー側のプログラムが動かない=攻撃されるポイントが少ないという構造的なメリットがあります。
金融、医療、個人情報を大量に扱う業界など、セキュリティ要件が厳しいビジネスでは、Next.jsのセキュリティ特性は大きなメリットです。
メリット4. デザインの自由度が高い
WordPressはテーマ(テンプレート)をベースにカスタマイズするため、テーマの設計に沿った範囲でのデザインになります。
Next.jsはすべてをゼロからプログラミングするため、デザインに一切の制約がありません。アニメーション、インタラクション(マウスオーバーで動く演出など)、独自のレイアウトなど、思い描いたデザインをそのまま実現できます。
「他社とは全く違う、独自の世界観を表現したい」というブランディング重視のサイトでは、Next.jsの自由度が活きます。
メリット5. 大規模サイトやアプリへの拡張性
Next.jsは、コーポレートサイトだけでなく、Webアプリケーション(会員サイト、管理ツール、予約システムなど)にも対応できる技術です。
「まずはコーポレートサイトを作り、将来的に会員制のサービスやオンライン予約機能を追加したい」という中長期的な展開を見据えている場合、Next.jsで基盤を作っておくと、同じ技術スタックで拡張できるメリットがあります。
注意点・デメリットも正直にお伝えします
メリットだけでなく、Next.jsの注意点も正直にお伝えします。
制作費用はWordPressの2〜3倍が目安
| サイト規模 | WordPress(Swell) | Next.js |
|---|---|---|
| 5ページ | 30万〜50万円 | 80万〜150万円 |
| 10ページ | 50万〜80万円 | 150万〜300万円 |
| 15ページ以上 | 80万〜150万円 | 200万〜500万円 |
Next.jsの制作費が高い理由は、テンプレートを使わずにすべてをプログラミングで構築するためです。デザインの自由度と引き換えに、開発工数が増えます。
対応できる制作者が限られる
WordPress対応の制作会社やフリーランスは非常に多いですが、Next.jsに対応できるエンジニアは限られています。
これは制作時だけでなく、制作後の保守でも問題になります。制作者を変更したくなった時に、次の制作者がNext.jsに対応していない可能性があるのです。WordPressであれば、多くのエンジニアが引き継ぎ可能です。
非エンジニアだけでの運用は難しい
Next.js単体では、コンテンツの管理画面がありません。ブログやお知らせを投稿するには、microCMSやNewtなどのヘッドレスCMS(コンテンツ管理サービス)を別途導入する必要があります。
| CMS | 月額費用 | 特徴 |
|---|---|---|
| microCMS | 無料〜月4,900円 | 日本製。使いやすさに定評あり |
| Newt | 無料〜月4,900円 | 日本製。無料プランが充実 |
| WordPress(ヘッドレス利用) | サーバー代のみ | 既存のWP管理画面を活用 |
記事やお知らせの投稿は、これらのCMSを使えばWordPressに近い操作感で可能です。ただし、ページの追加やレイアウトの変更にはエンジニアの作業が必要という点は変わりません。
小規模・更新頻度の低いサイトにはオーバースペック
5〜10ページ程度のコーポレートサイトで、更新は月に数回のお知らせ程度──こうしたケースでは、Next.jsの高度な機能は必要ありません。
費用を2〜3倍かけてNext.jsで作っても、WordPress(Swell)で作った場合との体感的な差はほとんどないのが現実です。
費用を徹底比較|日本市場の相場
初期制作費
5ページのコーポレートサイトを外注する場合の費用比較です。
| 費用項目 | WordPress(Swell) | Next.js(+ microCMS) |
|---|---|---|
| デザイン | 15万円 | 15万円(同じ) |
| コーディング/開発 | 15万〜25万円 | 40万〜80万円 |
| CMS構築 | 5万〜10万円 | 10万〜20万円 |
| テスト・調整 | 3万〜5万円 | 5万〜10万円 |
| 合計 | 38万〜55万円 | 70万〜125万円 |
月額運用費
| 費用項目 | WordPress(Swell) | Next.js(+ microCMS) |
|---|---|---|
| サーバー/ホスティング | 1,100円(主要レンタルサーバー) | 約2,600円(Vercel Pro $20) |
| CMS費用 | 0円 | 0〜4,900円(microCMS) |
| 保守費用 | 5,000〜10,000円 | 5,000〜15,000円 |
| 月額合計 | 約6,100〜11,100円 | 約7,600〜22,500円 |
3年間の総コスト比較
| 項目 | WordPress(Swell) | Next.js(+ microCMS) |
|---|---|---|
| 初期制作費 | 50万円 | 100万円 |
| 運用費(3年分) | 22万〜40万円 | 27万〜81万円 |
| 3年間合計 | 72万〜90万円 | 127万〜181万円 |
3年間で55万〜91万円の差があります。この差額が「表示速度の向上」「セキュリティの強化」「デザインの自由度」に見合うかどうかが、判断のポイントです。
【判断チェックリスト】あなたの会社にはどちらが最適?
WordPressが向いている会社(3つ以上該当すれば WordPress推奨)
- [ ] 社内にプログラミングができるスタッフがいない
- [ ] 制作予算は100万円以下
- [ ] ブログやお知らせを自分たちで頻繁に更新したい
- [ ] まずはホームページを持つことが第一目標
- [ ] 将来的に制作者を変更する可能性がある
Next.jsが向いている会社(3つ以上該当すれば Next.js検討)
- [ ] 表示速度がビジネスの売上に直結する(EC、メディア等)
- [ ] 制作予算が100万円以上ある
- [ ] 社内にエンジニアがいる、または長期外注の予算がある
- [ ] セキュリティ要件が厳しい業界にいる
- [ ] 将来的にWebアプリへの拡張を計画している
どちらのチェックも2つ以下の場合は、まずWordPressで始めて、必要性を感じた時にNext.jsへの移行を検討するのがおすすめです。
Next.jsコーポレートサイトの採用事例
大企業の採用事例
Next.jsを採用している有名企業には、以下のような例があります。
- Ferrari ── ブランドサイト。表示速度と視覚演出を両立
- LEGO ── ECサイト。大量のトラフィックに対応
- はてな ── コーポレートサイト。技術力の証明としても機能
- メルカリ ── 一部サービスで採用。パフォーマンス重視
ただし、これらは自社に開発チームを持つ大企業の事例です。中小企業がそのまま真似をすると、制作・運用コストが見合わないケースがほとんどです。
中小企業での現実的な活用パターン
中小企業がNext.jsを採用するケースとしては、以下のようなパターンがあります。
- 社内にReact/Next.jsが書けるエンジニアがいる会社が、自社サイトを内製する
- IT企業のコーポレートサイトで、自社の技術力をアピールする目的
- 表示速度が直接売上に影響する業種(ECサイト、メディアなど)

まとめ|技術の「新しさ」ではなく「必要性」で判断する
| 項目 | WordPress | Next.js |
|---|---|---|
| 制作費 | 30万〜80万円 | 80万〜300万円 |
| 運用の手軽さ | ◎ 誰でも更新可能 | △ CMS導入が必要 |
| 表示速度 | ○ 十分速い | ◎ 非常に高速 |
| セキュリティ | △ 保守管理が必要 | ◎ 構造的に安全 |
| 制作者の選択肢 | ◎ 非常に多い | △ 限られる |
| おすすめの企業 | ほとんどの中小企業 | 速度/セキュリティ重視の企業 |
Next.jsは確かに優れた技術です。しかし、「新しいから良い」「速いから良い」ではありません。
大切なのは、あなたの会社のビジネスに本当に必要な技術かどうかを見極めることです。WordPressで十分な成果が出せるのであれば、わざわざ費用を2〜3倍かけてNext.jsにする必要はありません。
逆に、表示速度やセキュリティが事業の成長に直結するのであれば、Next.jsへの投資は十分にリターンが見込めます。
First CHでは、WordPress/SwellとNext.jsの両方に対応しています。どちらの技術が最適かの判断から、お客様と一緒に考えます。
「Next.jsに興味があるけど、うちに必要なのかわからない」──そんなご相談も歓迎です。
