「AIに指示すればホームページが作れると聞いた」というご相談が、この1年で明らかに増えました。結論から言えば、作れます。文章も画像もページの見た目も、AIツールで一定の水準まで出せるようになりました。数年前とは前提が変わっています。
一方で、「作れた」と「使える状態になった」の間には距離があります。この距離を知らずに始めると、8割まで進んだところで止まり、そこから先に時間だけがかかります。
AIで作れるのはホームページの「見た目と文章」までです。詰まるのはその先——ドメインとメール、法律で必要な表記、公開後の更新、検索やAIに認識される状態を作ること——で、ここは今もAIが肩代わりしてくれません。判断の分岐点は予算ではなく、「サイトが止まったら業務に影響が出るか」です。出るなら依頼、出ないなら自作から始めて構いません。
この記事では、AIで実際にできることと詰まる箇所を分けて整理し、自作と依頼のどちらを選ぶかの判断基準までを解説します。
AIで実際にできるようになったこと
まず、できる範囲を正確に把握します。過小評価すると不要な費用がかかり、過大評価すると途中で止まります。
| 作業 | AIでできるか | 補足 |
|---|---|---|
| 文章を書く | できる | 事実確認は人が必要。自社の実情は学習していない |
| 見た目のデザインを作る | できる | テンプレートを選ぶより自由度が高い |
| 画像を用意する | できる | 実際の店舗・スタッフの写真は代替できない |
| ページを組む | できる | ノーコードツールやAIコード生成で可能 |
| サーバーに公開する | 部分的にできる | 手順の案内は得られるが、契約と設定は人が行う |
| ドメインとメールを整える | できない | 契約・認証設定は自分で行う必要がある |
| 公開後に更新し続ける | できない | 誰が何を更新するかは運用の問題 |
上半分はAIに任せられ、下半分は残る——これが2026年時点の実感です。そして受注や集客に効くのは、実は下半分の整備であることが多くあります。
「全部自分で作る」か「全部任せる」かの二択ではありません。AIで作った下書きやデザイン案を持ち込んでいただき、詰まる部分だけを引き受ける進め方は、費用を抑える現実的な方法です。実際、そうしたご相談は増えています。

自作で詰まりやすい5つの壁
1. ドメインとメールは別の作業
ホームページを作ることと、example.co.jp のような独自ドメインを取得して会社のメールを動かすことは、別の作業です。ここでつまずくと、サイトはできているのに公開できない状態になります。
さらに、独自ドメインでメールを送るには、送信を許可する設定(送信ドメイン認証)が必要です。設定しないまま運用すると、送ったメールが相手の迷惑メールフォルダに入ります。詳しくは問い合わせフォームのメールが届かない原因と直し方で解説しています。
2. 法律で書かなければならない項目がある
事業内容によっては、掲載が義務づけられている表記があります。
- 通信販売を行う場合の事業者情報・返品の条件などの表示
- 個人情報を取得する場合の取り扱いに関する記載
- 業種ごとの広告規制(医療、医薬品、金融、人材など)
- 資格や許認可が必要な業種での、資格・許可番号の表示
AIは一般的な雛形を出せますが、自社に何が必要かは判断できません。誤った内容をそのまま載せると、そのこと自体が問題になります。
3. 公開してからが本番になる
公開直後に問題が見つからなくても、その後に必ず更新が発生します。営業時間の変更、価格改定、実績の追加、そしてシステムの更新。
AIで作ったサイトを、作った本人が半年後に触れなくなる、というのは実際によくあります。生成時の文脈が残っていないためです。誰がどうやって更新するかを、作る前に決めてください。
4. 検索やAIに認識される状態は自動では作られない
見た目が整っているサイトと、検索エンジンやAI検索に正しく認識されるサイトは別物です。ページの構造、内部のリンク、事業内容が明確に書かれているか——こうした要素は、生成時に自動で満たされるものではありません。
生成AIが情報源として引用するサイトの条件についてはAI検索最適化(GEO)の基本、従来のSEOとの違いはGEOとSEOの違いで詳しく解説しています。
5. 使ったツールから抜けられなくなることがある
サービス上で完結するタイプのツールは手軽ですが、後から別の環境へ移せないことがあります。事業が育ってから移行しようとして、作り直しになるケースです。
判断の目安は、「作ったページのデータを、自分の手元に取り出せるか」です。取り出せない形式であれば、そのサービスを使い続ける前提で選ぶことになります。

自作が向くケース・依頼が向くケース
費用ではなく、サイトが止まったときの影響で判断してください。
- 事業を始めたばかりで、まず名刺代わりのページが欲しい
- サイト経由の売上・問い合わせがまだ無い、または少ない
- 掲載内容がほとんど変わらない(1〜3ページ程度)
- 自分で調べながら進める時間が確保できる
- サイト経由の問い合わせが受注につながっている
- 予約・決済・会員管理など、止まると直接損失が出る仕組みがある
- 広告規制のある業種で、表現の判断が必要
- 複数人で更新し、誰が何を触ってよいかを決める必要がある
- 既存サイトがあり、検索での評価を引き継ぐ必要がある
上段なら自作から始めて構いません。まず作ってみることの価値は大きく、何が必要かが自分で分かるようになります。 下段が1つでも当てはまる場合は、止まったときの損失が制作費を上回りやすくなります。

なお、テンプレートを使うか作り込むかという別の軸もあります。こちらはテンプレートとフルカスタムの違いで解説しています。
費用の考え方
自作の費用は「ツール代が安い」だけでは測れません。実際にかかるものを並べると次のようになります。
| 自作 | 依頼 | |
|---|---|---|
| 初期費用 | ツール代・ドメイン代のみ | 制作費 |
| 自分の時間 | 相当量。ここが最大のコスト | 打ち合わせと素材準備 |
| 公開後の更新 | 自分で行う | 自分か依頼かを選べる |
| 詰まったとき | 自分で調べて解決する | 相談先がある |
| 事業が育ったとき | 作り直しになることがある | 拡張を前提に設計できる |
自作の本当のコストは、ツール代ではなく経営者ご自身の時間です。1日かけて解決できなかった設定が、専門家なら30分で終わる、ということは珍しくありません。その1日を本業に使ったほうが利益が大きいなら、そこが分岐点です。
制作を依頼する場合の相場はホームページ制作の費用相場、少ない予算で始める場合の考え方は個人事業主のホームページ制作にまとめています。
補助金を制作費に充てられる場合があります。募集回で要件が変わるため、事前確認が必要です。
よくある質問
- AIで作ったホームページは、検索で不利になりますか?
-
作り方がAIかどうかで機械的に不利になることはありません。評価されるのは内容です。ただし、AIが一般論だけで書いた文章は、他社のサイトと似た内容になりやすく、結果として選ばれにくくなります。自社にしか書けない情報——実際の事例、価格の考え方、対応できる範囲——を入れられるかどうかが分かれ目です。
- ChatGPTなどに指示して、コードを書いてもらう方法はどうですか?
-
見た目を作るところまでは進みます。難しいのは、公開後に不具合が出たときです。生成されたコードの中身を理解していないと、どこを直せばよいか判断できません。使い捨てのページなら問題ありませんが、事業の窓口として長く使うなら、更新できる体制まで含めて考えてください。
- 自作したサイトを、後から作り直してもらうことはできますか?
-
できます。むしろ、一度ご自身で作られた方は「何が必要か」が明確になっているため、打ち合わせが早く進みます。ドメインが自社名義であれば、URLと検索での評価もそのまま引き継げます。
- AIツールで作ると、他社と見た目が似てしまいませんか?
-
既定の設定のまま使うと似ます。生成AIもテンプレートも、無難な構成に収束するためです。差が出るのは見た目そのものより、載せる情報とその順番です。自社の強みが最初の画面で伝わる構成になっているかを確認してください。
- どのAIツールがおすすめですか?
-
特定のツールを推奨する立場は取っていません。選ぶ基準としては、①作ったデータを取り出せるか ②独自ドメインを設定できるか ③問い合わせフォームの送信先を自分で設定できるか、の3点を確認してください。この3つを満たさないツールは、後で移行できません。
- 途中まで自作したものを見てもらうことはできますか?
-
できます。公開前の状態でも、URLまたは画面をお送りいただければ、不足している箇所と公開までに必要な作業をお伝えします。全部を作り直す必要があるかどうかも、その時点で判断できます。
まとめ
2026年時点で、AIはホームページ制作の「作る」部分を大きく肩代わりできるようになりました。変わっていないのは、公開後に事業の窓口として機能させる部分です。
- AIで作れるのは見た目と文章まで。ドメイン・メール・法定表記・更新体制は残る
- 判断基準は予算ではなく「止まったときに業務へ影響が出るか」
- 自作の最大のコストはツール代ではなく、経営者自身の時間
- AIで作った下書きを持ち込み、詰まる部分だけを依頼する進め方も有効
まずご自身で作ってみることは、無駄になりません。どこで詰まるかが分かった段階でご相談いただければ、その部分だけを引き受ける形でも対応できます。現状のサイトや作りかけの画面をお送りいただければ、必要な作業を整理してお伝えします。
