「WordPressはもう古いの?」「Next.jsの方が速いって聞いたけど、うちも変えるべき?」
Web制作の情報を調べると「WordPressからNext.jsに移行しました」という記事が目につくので、不安になる方も多いと思います。
この記事は、WordPressとNext.jsの両方で企業サイトを制作しているエンジニアが書いています。どちらか一方を売りたい立場ではないので、本音で比較します。
先に結論を言うと、ほとんどの中小企業にはWordPressが最適です。ただし、Next.jsの方が適しているケースも確かにあります。その判断基準を、この記事で明確にします。
WordPressとNext.js、まず結論から
30秒でわかる判定チャート
まず、あなたの会社にどちらが向いているか、3つの質問で判定してみてください。
Q1. 社内にプログラミングができるエンジニアがいますか?
→ いいえ → WordPressがおすすめ(この時点でほぼ確定)
→ はい → Q2へ
Q2. ホームページの制作予算は100万円以上ありますか?
→ いいえ → WordPressがおすすめ
→ はい → Q3へ
Q3. サイトの表示速度がビジネスの売上に直結しますか?(EC、メディアなど)
→ いいえ → WordPressで十分
→ はい → Next.jsを検討する価値あり
多くの中小企業は、Q1の時点でWordPressに決まります。それで全く問題ありません。WordPressは決して「古い技術」ではなく、世界中のWebサイトの40%以上で使われている、最も信頼性の高いプラットフォームです。
そもそも WordPress と Next.js って何が違うの?
技術に詳しくない方のために、それぞれの特徴をシンプルに説明します。
WordPress ── 誰でも更新できる「定番のホームページ作成ツール」
WordPressは、管理画面にログインして、ブログを書くような感覚でホームページを更新できるツールです。2003年に誕生し、20年以上の歴史があります。世界中のWebサイトの約43%がWordPressで作られています。
特徴を一言で言うと、「作った後に、自分たちで更新できる」こと。お知らせの投稿、写真の差し替え、テキストの修正──こうした日常的な更新を、プログラミングの知識なしで行えます。
Next.js ── エンジニアが作る「高速・高性能なサイト」
Next.js(ネクストジェイエス)は、プログラミング言語(React/JavaScript)を使って一からサイトを構築する技術です。2016年にVercel社が開発し、近年急速に普及しています。
特徴を一言で言うと、「表示速度とセキュリティに優れた、フルカスタムのサイト」が作れること。Netflix、Nike、Ferrrariなど、世界的な企業のサイトにも採用されています。
見た目は同じ。違うのは「裏側の仕組み」
ここが重要なポイントです。WordPressで作ったサイトとNext.jsで作ったサイトは、見た目にはほとんど違いがありません。
違うのは「裏側の仕組み」です。たとえるなら、同じ料理を「ガスコンロ」で作るか「IHクッキングヒーター」で作るかの違いに近いです。出来上がる料理(見た目)は同じですが、調理の仕組みが違います。
7つの比較軸で徹底比較
総合比較表
| 比較軸 | WordPress | Next.js |
|---|---|---|
| ① 制作費用 | ◎ 安い(30万〜80万円) | △ 高い(80万〜300万円) |
| ② 月々の運用費 | ○ 月6,000〜15,000円 | ○ 月3,000〜25,000円 |
| ③ 表示速度 | ○ テーマ次第で十分速い | ◎ 非常に高速 |
| ④ SEO | ○ プラグインで対応可能 | ◎ 構造的に有利 |
| ⑤ セキュリティ | △ 定期的な更新管理が必要 | ◎ 攻撃面が少ない |
| ⑥ 更新のしやすさ | ◎ 誰でも更新できる | △ CMS導入が別途必要 |
| ⑦ デザインの自由度 | ○ テーマの範囲内 | ◎ 完全に自由 |
以下、それぞれの比較軸を詳しく解説します。
① 制作費用(初期コスト)
| 項目 | WordPress(Swell) | Next.js |
|---|---|---|
| 5ページのコーポレートサイト | 30万〜50万円 | 80万〜150万円 |
| 10ページのコーポレートサイト | 50万〜80万円 | 150万〜300万円 |
| LP(ランディングページ)1枚 | 10万〜30万円 | 30万〜60万円 |
Next.jsの制作費がWordPressの2〜3倍になる主な理由は、すべてをプログラミングで構築する必要があるためです。WordPressはテーマ(テンプレート)を活用することで、効率的に制作できます。
② 月々の運用・保守費用
| 項目 | WordPress | Next.js |
|---|---|---|
| サーバー費 | 月1,000〜3,000円(主要レンタルサーバー) | 月0〜2,600円(Vercel Pro $20) |
| CMS費用 | 0円(WordPress本体は無料) | 月0〜5,000円(microCMS等) |
| 保守費用 | 月5,000〜10,000円 | 月5,000〜15,000円 |
| 月額合計 | 約6,000〜13,000円 | 約5,000〜23,000円 |
WordPressは保守(本体・プラグインの更新)が定期的に必要ですが、コストは安定しています。Next.jsはサーバー費は安いですが、CMS(コンテンツ管理ツール)の費用が別途かかるケースがあります。
③ 表示速度・パフォーマンス
表示速度はNext.jsの方が構造的に有利です。
| 指標 | WordPress(Swell最適化済み) | Next.js |
|---|---|---|
| PageSpeed(モバイル) | 70〜90点 | 90〜100点 |
| PageSpeed(PC) | 85〜95点 | 95〜100点 |
| 初回表示速度 | 1.5〜3秒 | 0.5〜1.5秒 |
ただし、WordPressも適切に設定すれば十分な速度が出ます。私がWordPress制作で使用しているSwellテーマは、表示速度に最適化されており、モバイルでも80〜90点台のスコアが出るケースがほとんどです。

「表示速度が大事」とよく言われますが、中小企業のコーポレートサイトでは、1秒の速度差がビジネスに大きな影響を与えることはまれです。ECサイトや大規模メディアなど、表示速度が売上に直結するビジネスでは、Next.jsの速度は大きなメリットになります。
④ SEO(検索エンジン対策)
| 項目 | WordPress | Next.js |
|---|---|---|
| メタタグ設定 | SEO SIMPLE PACK等で簡単 | プログラミングで実装 |
| 構造化データ | プラグインで対応 | 自由に実装可能 |
| Core Web Vitals | テーマの品質に依存 | 構造的に高スコア |
| サイトマップ生成 | プラグインで自動生成 | プログラミングで実装 |
SEOに関しては、どちらも適切に設定すれば同等の効果が得られます。WordPressはプラグインで手軽にSEO設定ができ、Next.jsはCore Web Vitals(表示速度関連の指標)で有利です。
正直に言うと、コンテンツの質とサイトの構成が、技術の違いよりもSEOに大きく影響します。
⑤ セキュリティ
これはNext.jsが明確に有利な領域です。
WordPressはオープンソースであり、世界中で使われているため、ハッカーの攻撃対象になりやすいのが現実です。WordPress本体やプラグインのセキュリティアップデートを放置すると、サイトが改ざんされるリスクがあります。
ただし、定期的なアップデートと適切なセキュリティ対策を行えば、リスクは十分に管理できます。これは保守契約に含まれるべき作業です。
Next.jsは静的ファイル(あらかじめ完成したHTMLファイル)を配信する仕組みのため、そもそも攻撃される「入口」が少ないという構造的なメリットがあります。
⑥ 更新のしやすさ(社内で更新できるか)
これが最も重要な判断基準だと私は考えています。
| 操作 | WordPress | Next.js(+CMS) |
|---|---|---|
| ブログ記事の投稿 | 管理画面から簡単に投稿 | CMS(microCMS等)から投稿 |
| 写真の差し替え | 管理画面からドラッグ&ドロップ | CMS経由で可能 |
| ページの追加 | テンプレートを使って作成可能 | エンジニアの作業が必要 |
| デザインの変更 | テーマカスタマイザーで一部可能 | エンジニアの作業が必要 |
WordPressは、パソコンの基本操作ができれば、誰でもブログの投稿やお知らせの更新ができます。
Next.jsの場合、記事の投稿にはmicroCMSなどの外部サービスを利用しますが、ページの追加やデザインの変更にはエンジニアの作業が必要です。社内にエンジニアがいない企業は、修正のたびに制作者に依頼することになります。
⑦ デザインの自由度
Next.jsはすべてをゼロからプログラミングするため、デザインの制約がありません。思い描いたデザインをそのまま実現できます。
WordPressはテーマ(テンプレート)をベースにカスタマイズしますが、テーマの設計の範囲内での自由度になります。ただし、Swellのような高品質テーマを使えば、中小企業のコーポレートサイトで必要なデザインは十分に実現可能です。
費用を徹底比較|3年間の総コストで考える
制作費だけでなく、3年間のトータルコストで比較してみましょう。
10ページのコーポレートサイトの場合
| 項目 | WordPress(Swell) | Next.js(+ microCMS) |
|---|---|---|
| 初期制作費 | 50万円 | 150万円 |
| テーマ/CMS費(初期) | 1.8万円(Swell購入) | 0円(microCMS無料プラン) |
| サーバー費(年間) | 1.3万円 | 3.1万円(Vercel Pro) |
| CMS月額(年間) | 0円 | 0〜6万円 |
| 保守費(年間) | 6〜12万円 | 6〜18万円 |
| 1年目の総コスト | 約59〜65万円 | 約159〜177万円 |
| 3年間の総コスト | 約73〜89万円 | 約177〜225万円 |
WordPressの方が、3年間で約90万〜136万円安い計算になります。
もちろん、Next.jsには表示速度やセキュリティのメリットがあるため、単純に「安い方が良い」とは言えません。大切なのは、そのメリットがあなたのビジネスに本当に必要かどうかです。
どちらを選ぶべき?ケース別ガイド
こんな会社はWordPressで十分です
以下に当てはまる企業は、WordPressで制作するのが最もコストパフォーマンスの良い選択です。
- 社内にエンジニアがいない(従業員50名以下の企業のほとんど)
- ブログやお知らせを自分たちで更新したい
- 制作予算が100万円以下
- まずはホームページを持つことが最優先
- サイトの表示速度が売上に直結しないビジネス(問い合わせ型のコーポレートサイトなど)
私に相談いただくお客様の8割以上にWordPressをおすすめしています。WordPress、特にSwellテーマを使った制作であれば、表示速度・SEO・デザインのいずれも高い水準で実現できます。
Next.jsを検討すべきなのはこんなケース
一方、以下に当てはまる場合は、Next.jsが適している可能性があります。
- 表示速度が売上に直結するビジネス(ECサイト、大規模メディアなど)
- 月間10万PV以上のトラフィックがある(または見込まれる)
- 社内に開発チームがいる、または長期的なエンジニア外注の予算がある
- セキュリティ要件が特に厳しい業界(金融、医療など)
- 将来的にWebアプリケーションへの拡張を予定している
Next.jsの真価が発揮されるのは、サイトの規模が大きく、パフォーマンスがビジネスに直接影響する場合です。
「WordPress + Next.js」のハイブリッド型って何?
技術に詳しい方は「ヘッドレスCMS」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。これは、WordPressの管理画面(コンテンツ管理)と、Next.jsの表示部分(フロントエンド)を組み合わせるアプローチです。
わかりやすく言うと、「裏方の管理はWordPressの使いやすい画面で行い、お客様に見せるサイトはNext.jsの高速な仕組みで表示する」という、いいとこ取りの方法です。
メリット
- WordPressの管理画面の使いやすさを維持できる
- Next.jsの表示速度とセキュリティを得られる
デメリット
- 制作費がさらに高くなる(Next.js単体よりも開発工数が増える)
- 運用が複雑になり、対応できるエンジニアが限られる
- トラブル発生時の原因究明が難しくなる
正直に言うと、中小企業にはまだ早い
ヘッドレスCMSは技術的にはとても魅力的ですが、運用の複雑さとコストを考えると、従業員50名以下の中小企業にはおすすめしにくいのが正直なところです。
対応できるエンジニアが少ないため、制作者を変更したい時に選択肢が極端に狭まるリスクもあります。将来的に技術が成熟し、対応できるエンジニアが増えれば、選択肢として現実的になるでしょう。
両方作れる制作者だからこそ言える本音
私はWordPress/SwellとNext.jsの両方で企業サイトを制作しています。どちらか一方を推したい立場ではないので、率直にお伝えします。
WordPressが向いている典型ケース
「月に2〜3回お知らせを更新したい」「スタッフブログを書きたい」というご要望の場合、WordPressの管理画面の使いやすさは圧倒的です。制作後のレクチャーも短時間で済みますし、お客様自身で安心して運用できます。
Next.jsで作ってよかった典型ケース
「とにかく表示速度を最速にしたい」「他社と差別化できるUI/UXにしたい」というご要望の場合、Next.jsのフルカスタム開発の自由度は大きなメリットです。PageSpeedスコアでモバイル95点以上を安定して出せます。
「Next.jsにすべき」と安易に勧めない理由
Web制作業界では、「Next.jsの方が技術的に優れている」という風潮があります。技術者としてはその気持ちもわかります。しかし、お客様のビジネスに最適かどうかは、技術の新しさとは別の話です。
制作費が2〜3倍になり、更新のたびにエンジニアに依頼が必要になり、対応できる制作者も限られる──こうしたデメリットを上回るメリットがあるかどうかを、冷静に判断すべきです。
私が技術選定で大切にしているのは、「お客様が制作後も困らない選択をする」ことです。
よくある質問とまとめ
WordPressは時代遅れ?
いいえ。2026年現在も世界中のWebサイトの43%以上がWordPressで作られており、最も使われているCMSの地位は揺るぎません。定期的にアップデートも行われており、技術的にも進化し続けています。「時代遅れ」と言われるのは、Next.jsの制作会社がポジショントークとして発信しているケースが多いです。
Next.jsのサイトは更新が大変?
記事やお知らせの投稿は、microCMSなどの外部CMS(コンテンツ管理サービス)を導入することで、WordPressに近い操作感で更新可能です。ただし、ページの追加やデザインの変更にはエンジニアの作業が必要です。
途中でWordPressからNext.jsに移行できる?
技術的には可能です。ただし、サイトをゼロから作り直すのと同等の費用と期間がかかるのが現実です。「将来Next.jsに移行するかも」という場合は、最初からNext.jsで作るか、まずWordPressで始めて成果を確認してから判断するのがおすすめです。
SEOはどちらが有利?
どちらも適切に設定すれば、SEOの効果は同等です。 Next.jsはCore Web Vitals(表示速度の指標)で有利ですが、SEOの成果を決めるのは技術よりもコンテンツの質とサイト構成です。
まとめ|技術選定は「目的」から逆算する
| 判断基準 | WordPress | Next.js |
|---|---|---|
| 社内にエンジニアがいない | ◎ おすすめ | × 運用が困難 |
| 予算100万円以下 | ◎ 対応可能 | × 予算不足 |
| 自分で更新したい | ◎ 管理画面で簡単 | △ CMS導入が必要 |
| 表示速度が最重要 | ○ 十分速い | ◎ 最速 |
| 大規模サイト(30P以上) | ○ 対応可能 | ◎ より適している |
| セキュリティ重視 | △ 保守が必要 | ◎ 構造的に安全 |
技術選定で最も大切なのは、「新しいから」「速いから」ではなく、「自社のビジネスに本当に必要か」で判断することです。
迷ったら、WordPressで始めてください。WordPressで始めて失敗することはほとんどありません。必要性を感じた時に、Next.jsへの移行を検討すれば十分です。
「うちの場合はどっちがいい?」──技術選定のご相談だけでも歓迎です。WordPress/Next.js両方の視点から、最適な選択をご提案します。
